マクドナルドの無料コーヒーと電子書籍の売上 の関係: 電子書籍の売上と無料キャンペーンには大きな関係があります。それは、マクドナルドの無料コーヒーのキャンペーンを別の視点から探ることで見えてきます。
マクドナルドの無料コーヒーのキャンペーンが教えてくれること
2017年1月16日から20日までの5日間、マクドナルドが当たらに投入したプレミアムコーヒーのプロモーションのために無料キャンペーンを開催していました。この期間中に朝7時から10時までの対象時間帯に列に並んで、通常は100円の無料のコーヒーを楽しんだ方も多くいるのではないでしょうか。
ネット上では予想に反してあまり混雑していないという情報もありました。しかし、私がいつも朝に時間を過ごすマックには、沢山の男女のサラリーマンが押し寄せていました。
マクドナルドと言えば、世界中で展開する最大手のフランチャイズ事業です。その日本法人の日本マクドナルドは、一昨年の不純物混入事件以来は業績が低迷していましたが、最近は様々な施策のお陰で活気を取り戻しつつあるようです。
今回の無料キャンペーンも、そのプロモーション活動の一つといえます。これまでに、100円バーガーやおまけのキャンペーンはありましたが、何も買わなくても手に入れられる、全くの無料キャンペーンは聞いたことがありませんでした。
今回の目的は、マクドナルドはプレミアムコーヒーを刷新して、「質とおいしさの向上」ということです。この5日間の無料キャンペーンのために200万杯を用意したとのこと。小売価格ベースで言えば2億円に相当しますので、大変な規模であることは間違いありません。
そういう私もほぼ毎日コーヒーをマックで飲むため、この期間は無料のコーヒーの恩恵に預かりました。
実は、このおいしくなった無料コーヒーから電子書籍の売上との意外な関係が見えてきます。
なぜ今、無料キャンペーンなのか?
では、マクドナルドはなぜ今、これほどまでの前代未聞の無料キャンペーンを行ったのでしょうか?
もちろん、不純物混入事件の名誉挽回と集客という目的は明らかですが、もう少しマクドナルドの無料キャンペーンの内容を詳しく見てみましょう。
顧客の視点から見ると、マクドナルドの今回の無料キャンペーンは以下のようなメリットがあったと考えられます。
- 無料にすることにより、有料で販売するときよりも何倍、何十倍者利用があり、いったん離れたもと顧客層に対して、より多くの人に店まで足を運んでもう一度試してもらえる。
- 無料のコーヒーと一緒に割引クーポン券を必ず手渡して、次回の購入に結びつける導線を用意していた。
- 数年前の事件の記憶が遠ざかる中、何度も無料でお試しをするうちに、次第に客の意識に変化が起こり、無意識のうちにロイヤルティが高まっていく。
平日の朝の時間帯といえば、家族連れや若者ではなく、店内は主に出勤前の整理の時間や軽い朝食をとるサラリーマンが主なターゲット層といえます。
最近はコンビニも100円のコーヒーが人気を集めています。これに対抗するために、グレードアップする必要があったのです。
今回は、コーヒーのグレードアップと同時にこの3つの目的を見事に果たしていたようです。実はこの方法、電子書籍の売上アップに直結する非常に貴重なノウハウが詰め込まれています。
では、個人出版の著者はマクドナルドから何を学ぶことができるのでしょうか?
Amazonベストセラー作家が発見したKDP Select無料キャンペーンと売上の関係
実は、このマクドナルドの無料キャンペーンは、前日ご紹介したAmazonベストセラー作家のマーク・ドーソンがKDP Selectの無料キャンペーンをした時と、全く同じように重なります。
彼の場合、週末をまたいだ数日の無料期間で22,000以上のダウンロードがありました。これだけでも驚きの数字です。(これを日本で行うには、Amazonの大手出版社が協力して無料キャンペーンを行うときくらいの規模と言えます。)
マーク・ドーソンはその時に愕然としました。マクドナルドの場合には、手渡した割引クーポン券で次回以降の来店を誘導することができます。しかし彼の場合、それほど多くのダウンロードがあったのにもかかわらず、彼の手元には何も残らなかったからです。
もちろん、無料期間中の読者型の有料本を購入することがあるため、全体的に売上アップにはつながりました。しかしそれは一過性のもので、継続した売上増には結びつきません。
マーク・ドーソンはこの頃には本を書きながら同時に、いかに売上を伸ばすか、マーケティングについて学び始めていました。そして、そこから次のような非常に重要な発見に至ったのです。
- 電子書籍を無料にすることで、有料のときよりも何倍、何十倍もの読者に自分の本を手にとってもらえる。これにより、試し読みをしてもらえる。
- 無料にしただけでは、Amazonから読者リストやコンタクト先を手に入れることはできない。このため、無料の電子書籍内にメール登録でを集めるしてもらう導線を仕込んだ。
- これにより、無料ダウンロード以降もメール配信やFacebookやTwitterで継続的に読者と繋がって、これ以外のシリーズ本や新刊リリースの告知を行っていった。
この後からマーク・ドーソンは、新しいシリーズ本を出すときには最初の一冊を無料にし、そこから読者登録してもらうようにしました。そして、読者に直接語りかけて熱狂的なファン層を拡大する仕組みを採用しました。そこから、彼の大躍進が始まったのです。
マクドナルドの無料コーヒーと電子書籍の売上: 電子書籍を無料にするとなぜ結果的に売上が伸びるのか
本を無料にすることで、より多くの販売に結びついていくということは、一見すると、多くの著者が持つ常識とは正反対のことです。
これまで本は定価で販売されるのが常識でした。「割引は本の価値を下げ、著者のプライドやグレードを傷つけることになりかねない」そう考えられてきました。
しかし、電子書籍の登場でこの常識が大きく変わろうとしています。
これまで、本は書店で定価で売るしか方法はありませんでした。Amazonで売っても定価です。しかし、デジタルとなった電子書籍にその制約はありません。
他のデジタル・アプリでは、DropboxやEvernote、スマホゲームなどがそうであるように、無料で膨大な数のユーザーを集めて、使ってもらいながら有料のコンテンツやサービスへと結びつけています。
これと全く同じ「デジタルコンテンツ」の考えで電子書籍もアプローチするときが来ているのです。
Kindleストアへ行って、「無料本」カテゴリーを開いてみてください。この記事の執筆日現在でそこに表示されるのは、「東京タラレバ娘」「課長 島耕作」「ちはやふる」など、講談社などの大手出版社の話題本シリーズの最初の数冊がズラッと並びます。
では、大手出版社にコネがない、注目されない個人の著者はどうしたら良いのでしょう?
少なくとも、日本の十倍以上の規模を持つAmazon.comのKindleストアのインディ・ベストセラー作家は、無料と有料をうまく使い分け、大手出版社に全面的に頼ることはありません。
彼らは、自分がいつでも直接アプローチできる何万人という読者層のリストを手に入れました。シリーズ本を次々と投入しながら継続的に売上を伸ばしていく方法を使って成功しているのです。
では、この具体的な方法とは一体どのようなものなのでしょうか?次回は、無料本から読者を集めるより具体的な方法についてお話したいと思います。
マーク・ドーソンのより詳しい内容については以下の記事をご覧ください。